大正時代。世の中は()各地で起っ()た米騒動で騒然としていた。幸子は三日間も歩きつづけていた。幸子の主人が、米騒動に捲き込ま()れ、目前で殺されてしまい()、その場から逃げ出して来たのだ。そんな幸子の後を尾()ける一台の車があった。車には、ホ()テルの()女主人・洋子が乗っていた。洋子は幸子を()自分のホテルへ招いた。そのホテルとは、奥深い()森の中にあり、セックスと暴力で人間が人間を飼育する快楽の園だった。ホテルの()男主人・竜之介は、純な幸子を見て巧みに幸子の飼育を()始めた。竜之助と洋子にとって善悪などは問題外であり、快楽のみが生きる証しであった。善の象徴たる幸子に対()して、異常な興奮を覚える()のだった。そんな時、ホテルへ二人の旅人がやっ()て来た。幸子にとっては言葉の()通じあえ()る唯一の人間だった。しかし、それは竜之肋の企みによって断たれてしまった。竜之肋と洋子は、旅人()を快楽の()淵に溺れさせ、やがて殺してしまった。食欲なまでに快楽()を求める竜之助と洋()子。だが、幸子はその快楽を頑なに()拒否した。自分が快楽を受け入れたならば、旅人の()ように殺されるこ()とを察知したから()である。その三人の奇妙な生活がつづいた。そして、新たな旅人がホテルを訪()れた。有頂点になる竜之助と洋子。その眼は()残酷さに光り輝いていた……。