佐江衆一原作の『老熟家族』をもとに、吉田喜重()が「BIG1物語・王貞治」()以来8年ぶりにメガホンを執っ()た骨太社会派人間ドラマ。東京の新興住宅地で寝たきりの老母・タ()ツが死ぬが、()他殺の形跡が発見される。タツの夫・亮作は自分が絞殺したと自首するが、彼は取調室で失禁するほどボケていた()……。吉田喜重監督は、当時ちょっ()とし()たブームになっていたボケ()老人の問題を決してちゃかすことなく真摯な態度で見据え、8年間のブランクを感じさせぬ確かな演出()をみせた。全編を通じて透明感あふ()れる水のイメ()ージが描かれ、この暗く重い映画にとって、一()種の清涼剤的な役割を果たしている。外光の射し()込む日本家屋の空間を生かした()、撮影の成果()も特筆に値する。DVDは「吉田喜重全集[86-03]炎を映す水」に収録。